別れ上手と思われて
後腐れがなくて捨てやすいと思われている男が本当の愛を求めてさまよい続ける物語。
1986年3月。
北海道の高校を卒業した俺は大阪の会社に就職した。
北海道はまだ雪が残っていたのに、この大阪ではもう桜が咲いている。
会社は東証一部の大企業で、高卒30人、大卒40人の新入社員が大阪の研修施設に集まった。
初めての土地で就職、知っている顔などどこにもない、はずだった。
なのに、何か見覚えのあるようなないような顔がある。
誰だっけ?どこかで会ったことがあるのか?
それとも気のせいか?
相手も俺の顔を見て、怪訝な顔をしている。
会ったことがあるのは間違いない、と思った。
「あったこと、あるよね?」
思い切って聞いてみた。
「あるような気がする。どこから来たの?」
俺は北海道のR市と答えた。
「あーっ!わかった。俺はF市。自動車学校だ!」
どうやらお互いの住んでいた街から中間点にある自動車学校に同じ時期に通っていたらしい。
見知らぬ土地で心細かった18歳の俺たちは、ほんのわずかな共通点を見つけてすっかり意気投合した。
俺の会社員としての生活はここからスタートした。
※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい半分くらいが真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。人物はほぼだいたいが仮名です。
ゆーが編集リーダーで作った電子書籍です。↓