大阪、兵庫、群馬で3週間に渡る新人研修を終え、高卒の新人のほとんどはまずは出身地に近い支店に配属された。北海道出身の俺は札幌支店だ。
札幌支店と言ってもそこに通ったのはゴールデンウイーク明け頃までのわずかな期間。その後は先輩について、函館、滝川、苫小牧など北海道各地の現場を転々とする。
そして6月には層雲峡という山の中の温泉街の近くの現場に入った。
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まだ工事の始まっていない山の中の現場は人気も設備も無い状態。これからどうやって人や設備を配置するかという段階だ。そんな場所を一人で見回っていた時、俺は急激な腹痛に襲われた。
これはまずい。トイレのある場所まで間に合わない。
もともと人が通るような場所ではないので、誰かに見られる心配はない。それでもできるだけ隠れられるように大きめの木の近くに陣取った。
急激にお腹が軽くなってほっと一息つく。
お尻を拭こうと、手を下に差し入れた瞬間だった。
そうだ。ここはトイレではない。
出したモノはお尻と地面とのほんの10センチくらいの隙間にあるのだ。
見事に俺はその隙間に手を突っ込んだ。一瞬何が起きたのかわからなかった。
数秒後、俺は自分の放出したモノの山に手を突っ込んだと理解した。
6月とはいえ、北海道の山の中はまだひんやりとした空気が流れる。
その冷たい風が俺の尻を撫でていた。
近くを流れる川で手を洗う。
トイレのある場所で働こう。
俺は会社を辞めることを固く決意した。
こうして俺の新入社員生活は3か月で幕を閉じた。
運命的な再会だと思った、F市出身の同期にもそれきり会っていない。
※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい半分くらいが真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。人物はほぼだいたいが仮名です。
別れ上手と思われて
後腐れがなくて捨てやすいと思われている男が本当の愛を求めてさまよい続ける物語。