お盆を過ぎてすっかり涼しくなった北海道の海は、人もまばらになっていた。
ひと夏のほとんどを海で遊んで過ごしたら、所持していたお金も残り少ない。
3か月しか働いていないのだから、元々それほど貯まっていたわけではないのだ。
これから先、どうしようかなとは考えるものの、具体的には何も浮かんでこない。
ただ来年の春には父も鹿児島に転勤の予定だ。
その時には俺自身も就職して一人で生きていかなくてはならない。
まだ半年以上あるよなぁ・・・
砂浜を歩きながら、そんなことをぼんやり考えていたら、海沿いの家の屋根の修理をしている人が目に入った。
チビザルだ。
チビザルは、本来は一年先輩だが、俺が高校2年の時に留年で同じクラスになった男だ。小さくてすばしっこくて、小学生の頃から同じあだ名で呼ばれていた。
留年で同じクラスにいたのは2学期の終わりころまでで、シンナーを吸っているのがバレて退学になったクズみたいなやつだ。
そのチビザルが仕事をしている。
俺に気づいたようで、声をかけてきた。
俺は、仕事を辞めてひと夏ブラブラしていること、チビザルは高校を退学してからは、大工の見習いで働いていることなどを話した。
「お前もいいかげん真面目に働けよ」
こいつに言われてしまったか。
俺は当面のアルバイトでも探さなくてはと真剣に思った。
とりあえず明日から。
※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい半分くらいが真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。人物はほぼだいたいが仮名です。
別れ上手と思われて
後腐れがなくて捨てやすいと思われている男が本当の愛を求めてさまよい続ける物語。