「うちに来る?」
マサコはすんなり頷いた。
すすきのからタクシーで南郷7丁目駅に向かう。
すすきのの店を1時間で切り上げてしまって飲み足りない分は缶ビールで補おう。
ローソンで買い物をしていると、マサコの携帯に着信があった。
俺から離れたところで何か話している。
「友達から」
とだけ電話を切ったマサコは言った。
雪がちらつく道を、コンビニ袋をシャリシャリ鳴らしながら、俺の部屋まで一緒に歩いた。
ストーブで暖まり始めた部屋で一缶ずつビールを飲む。
「私、去年まで結婚してたの」
マサコはバツイチだった。離婚した原因は、いわゆるDVがひどかったらしい。
俺は長い水商売時代に、さまざまな事情を抱える女性をたくさん見ていた。
そんな事情からなかなか逃げられない女性も多い中、早いうちに解決できたのは良かったんじゃないかと思った。
翌朝、少しだけ積もった雪の上をキュッキュッっと踏みしめて、マサコを地下鉄駅まで送った。
改札からホームに降りる階段まで、ほんの数メートルなのに、マサコは2回も振り返って俺を見た。
この先もずっと関係が続くのかはわからないけど、久しぶりに彼女ができたような高揚した気分だ。
それから1週間ほどの学校が休みの期間、マサコが俺の部屋に来たり、俺が麻生にあるマサコの部屋に行ったり。会わない日はメールでやり取りしたりと浮かれた日が続いた。
年明けの学校再開初日。
雰囲気で他の先生や生徒にバレないようにと平静を装い、校内での時間を過ごした。
マサコも少し緊張しているのか表情は固いみたいだ。
地下鉄で部屋に戻り、携帯を確認するとマサコからのメールが入っていた。自然と頬が緩む。
冷たくて動きの鈍い指で急いでメールを開く。
『ユウへ。実は私には以前からお付き合いしている人がいます。もう二人では会えません。ごめんなさい』
たぶん続くんじゃないかな。
※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい半分くらいが真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。人物はほぼだいたいが仮名です。
週刊キャプロア出版 第36号は、ゆーが編集長しました。
テーマは『駅』