そうか。
不思議と怒りとか、がっかりとか悲しいとかの感情はなかった。
ほんの少し残念な気はするけれど。
俺は女性から見ると、後腐れがなくあっさりしていて別れやすいのだろうか。
7~8年前に別れた彼女のマミのことを思い出した。
あの時は、別れてすぐは何も思わなかったけど、数日後からどんどん失ったものの大きさに気づいたというか、すごく落ち込んだっけな。
マミもマミで、バーをやってる俺の店に、見せつけるように次々と男を連れてくるんだよな。
今でもマミのことを思い出すと、胃の辺りがズシンと重くなる。
マサコは、俺に彼氏を見せつけるとかそんなことはしないだろうけど。
俺はマサコにメールの返信をした。
『気にしないで。マサコと少しでも一緒にいられたことをとてもうれしく思います。マサコの思うように、好きな人と一緒にいてください』
知らなかったこととはいえ、彼氏にも悪いことをしてしまったな。
少しの罪悪感を、缶ビールで一気に胃に流し込んだ。
すきっ腹にアルコールが浸みて、軽い酔いがすぐに全身を支配する。
携帯が震えた。
マサコから返信かな。
もう温まった指でメールを開く。
ん、サトウさんからだ。
サトウさんは同じクラスでパソコン講座を受けている、俺より3つ年下の男だ。すらっと背が高く育ちの良さそうな顔をしている。実際に実家は道東にある都市のそこそこの資産家らしい。
『ユウさん、マサコがお世話になりました。マサコは今、俺の部屋にいます。ユウさんみたいな最低な人には渡しません。マサコも俺の方がずっといいと言っています。二度とマサコに連絡しないでください』
たぶん続くんじゃないかな。
※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい半分くらいが真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。人物はほぼだいたいが仮名です。
週刊キャプロア出版 第36号は、ゆーが編集長しました。
テーマは『駅』