「せっかくだから、このまま3人で続けましょう」
サトウさんからの予想もしない提案に、俺は少しの間、思考停止状態になってしまった。
でも考えてみたら、こんな提案をマサコがOKするわけがない。そう思ってマサコに確認する。
「マサコは、そんなこと無理だよね。3人で続けるとか」
「私は。それでも、いい」
いいのかよ。
なにか納得できないままではあったが、もう延々と続いた話し合いに疲れたのもあって、今日のところは引き上げましょうということになった。
あったこと全部を正直に話した部分についてはすっきりしている。
それからしばらく、マサコは俺の部屋に来たり、サトウさんの部屋に行ったりということが続いた。
今までと違うのは、マサコがどこで過ごしているのかを正直に話すということだった。
マサコが自分のところにいる時はいいけど、サトウさんのところにいるときはやはりストレスが溜まった。
俺はそんなはっきりしない状態に心のモヤモヤが収まらなくなり、この3人の関係からは降りることを伝えた。
札幌の雪が少しずつ湿り気を帯びてくる2月下旬。
半年間のパソコン講座も終わって、サトウさんからメールが届いた。
『あの後、僕もフラれました。お互い傷つきましたが、また前を向いていきましょう』
サトウさん、意外といい人なのかもしれないな。こんな関係じゃなかったらもっと仲良くなれたかも。
それからというもの、札幌駅に行くたびに、あのドーナツショップを見るたびに、カフェオレを何杯も飲みながら話し合った不思議な時間を思い出す。
終わり。
※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい半分くらいが真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。人物はほぼだいたいが仮名です。
週刊キャプロア出版 第36号は、ゆーが編集長しました。
テーマは『駅』