土木設計の会社での仕事は、役所に提出する書類の校正だったり、図面の色塗りだったり、コピーを取ったり。
社会人経験の少ない19歳の俺にはちょうど良い程度の仕事だった。
営業メインの社長と設計などの実務メインの次長は兄弟だ。
弟の次長は仕事の提出期限が近くなりストレスが溜まるとどこかに行方不明になり、社員のカネダさんが青くなって探し回るということがよくあった。
次長が行方不明になっているのはたいてい昼間で、バイトの僕たちはその間手持ちぶさたになる。
次長は夕方辺りに戻ってきて仕事を始めるので、バイトの残業も増えて金銭的なことを考えると、もっと行方不明になってほしかった。
こんな小さな会社だから、がんばって仕事を覚えてバリバリやれば社員にしてもらえるのだろうけど、この社長、次長の兄弟を見ていると、まったく将来性も感じない。
特に内またでなよなよと歩く無駄に長身で、実際は臭わないのに見た目だけで加齢臭を感じる次長を見ると、こんな大人にはなりたくないと強く思った。
俺はすぐに、次はなんの仕事にしようかなと考えるようになった。
そんながんばりがいもなく、刺激のない職場でのモチベーションは、経理で5つ年上のアキコさんと、図面書きのアルバイトで6つ年上のヒロミさんだ。
俺にとって、働いている年上の女性はとても魅力的に映った。
ゆるめの服で胸元がチラリと見えたり、短めのスカートだったりした時は、ピンク色のアドレナリンが全身を駆け巡る。
そんな俺の視線に気づいているのかいないのか、ある日アキコさんから飲みのお誘いが入った。
もちろん、アキコさんから見れば、職場の後輩にたまに奢ってあげようという感覚なのだろう。
でも、そんなことはわかっていても興奮してしまい、すすきのの地図を見て、どのルートでホテルに行けばいいのか、ラブホテルって支払いはどうするのだろうとかソワソワしてしまっていた。
※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい半分くらいが真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。人物はほぼだいたいが仮名です。
別れ上手と思われて
後腐れがなくて捨てやすいと思われている男が本当の愛を求めてさまよい続ける物語。